アカゲザルでクローン胚の作製とそれを用いたES細胞の株樹立に成功したことを、米国の研究チームが11月14日付のNature電子版で発表した(こちら)。今回ヒト以外の霊長類で成功したことから、ヒトでも同様の方法が成功する可能性が出てきた。また、これによって治療用クローン作製の実現に一歩近づくことになるとみられる。

米国立オレゴン霊長類研究センターのShoukhrat Mitalipovたちは、アカゲザルの成体から取った皮膚の繊維芽細胞の核を、体細胞核移植と呼ばれる方法で、14匹の雌アカゲザル成体から採取して核を除去した304個の卵子に注入した。次にこれらの卵子を、胚盤胞と呼ばれる初期胚の段階まで発生させ、そこから胚性幹細胞(ES細胞)を取り出し、それらから2つの幹細胞株を樹立した。

ES細胞は、体を作るほぼ全種類の細胞へ分化する能力をもっている。今回のアカゲザルと同じように、患者の体細胞に由来するES細胞を作り出すことができれば、患者ひとりひとりに合わせたテーラーメイドのES細胞を用いて、免疫の拒絶反応を起こすことなく、さまざまな疾患を治療できると考えられる。

クローン胚の作製は数種の動物で既に成功しているが、霊長類では今回が初めてである。2004年2月にソウル大学教授(当時)の黄禹錫(ファン・ウソク)が、ヒトクローン胚からES細胞を作製することに成功したと発表したが、後にその論文は捏造であることが明らかとなった(こちら)。そして今までのところ、体細胞核移植法を使ったES細胞の作製は、マウスでしか成功していなかった。

Mitalipovたちの研究結果を、オーストラリアの別の研究チームが実験で検証し、同じく14日付のNature電子版で発表した。(こちら)。その論文でモナッシュ大学のDavid Cramたちは、Mitalipovたちの得たES細胞が本当に体細胞のクローン作製によって生み出されたものであることを実証している。

これに関連するNatureのNews and Views記事(こちら)では、クローン羊のドリーを乳腺細胞から作り出したIan Wilmutと同僚のJane Taylorが、疾患の治療や遺伝子レベルでの機構解明に、幹細胞がどう役立つ可能性があるかを論じている。「我々は、患者に特異的な細胞を治療に利用することを急ぐあまり、これらの細胞が基礎研究や創薬にとっても非常に価値があることを忘れがちである。例えば、こうして得られたES細胞は、遺伝疾患研究の新しい道を開いてくれるかもしれない」と2人は述べている。